NHKスペシャル『亜由未が教えてくれたこと~障害者の妹を撮る~』ご覧になられた方は
居られるでしょうか。
2016年7月26日、相模原市の障害者施設で入所者ら46人が刺され、19人が亡くなった事件が
ありました。犯人の言葉「障害者は不幸を作ることしかできない」という悲しい偏見に驚か
されたのも…記憶に新しい所です。
とても残念な話でしたが、今回は犠牲者と同じ重度の障害を持つ亜由未さんが主役。カメラで
追っていくのが、NHK青森でディレクターをしている実のお兄さんでした。お兄さんは『自分の
家族は不幸じゃない』と伝えたかったそうですが、小さい頃から介助や世話は親任せ。障害者の
家族は幸せだと胸を張って言えるのか…両親に相談し、介助をしながら亜由未さんを1か月に
わたり撮影することになったのです。
亜由未さんは、両親やヘルパーさんには幸せそうに笑顔を見せるのに、お兄さんには不機嫌
な顔で、なかなか警戒心を解いてくれませんでした。介助の大変さばかり感じ焦る毎日が続き
ました。そんなある日、両親から「結果的に笑顔だったのと、笑顔を求めるのは違う。障害
者は幸せじゃないと生きる価値がないと言っている植松被告と同じ考えになってしまう」と
戒められてしまいます。
亜由未さんは先天性の心臓病で、生後4日目に手術を受けました。脳の血管が破れ、障害が
残ったのです。脳性まひで首と右手以外はほとんど動かせません。鼻から胃に通したチューブ
で栄養と水分を取っています。1日2回の散歩が日課で、亜由未さんは、近所の人たちから
何度も声を掛けられる笑顔の素敵な人でした。
18年前にお母さんは大きな病気を患い、大腸を全摘出しています。寝ている間も体位交換は
欠かせないので、お母さんは週5日、1時間おきに朝まで介助を行っています。本当に大変な
事です…。
亜由未さんの家は4年前から「あゆちゃんち」という看板を掲げていました。亜由未さんが
地域の人と交流できるように、自宅で月に数回、英語教室や太極拳などのイベントを開催し
ているのです。障害者への偏見が生まれるのは、地域に障害者の居場所が少ないからだと
お母さんは考えていました。障害者が『生きていても仕方ない』などと言われるのは、障害者
自身ではなく社会のせいだとお母さんは話します。
ほとんど言葉を発することができない亜由未さんを、理解しようともがくお兄さんの姿を
通じて、障害者を育てる家族の本音、大変なのと不幸は違うということ、そして共に生きる
幸せとは何かを考えさせてくれました。
【結果的に笑顔だったのと、笑顔を求めるのは違う。障害者は幸せじゃないと
生きる価値がないと言っている植松被告と同じ考えになってしまう】
どんなに大変でも、どんなに辛くても、生きていて欲しいという家族の思い。自由に動きた
くても動けない…それでも、その命を全うしようとするひたむきな姿。どんなに不自由であっ
ても、幸せになる権利は誰にだってあるはずです。生きているからには、少しでも、そんな
体験をさせてあげたいと思うのが家族なのではないでしょうか。
私にも障害を持った甥っ子がいます。左足が折れて右足が変形し、自分では動く事すらでき
なくなっしまった動物の家族もいます。サポートする家族の苦労は、痛いほど分かります。
できることなら、本人や家族の負担が、少しでも軽減できるように、社会のサポート体制や
環境が整っていって欲しいものです。優れた医療器具や技術の進歩を、国も率先して支援し
て欲しい…そんな事を、心から願うばかりです。
10月5日放送のカンブリア宮殿『行列のできる地方銘菓スペシャル①地元愛と親子の絆が生ん
だ感動の菓子メーカー』の回、ご覧になられましたか?全国各地の百貨店で開かれる物産展で
必ず大行列を生み出すという菓子メーカー・ホリが今回の主役でした。
客を熱狂させるのは、魚介の旨みが染み込んだ「北海道開拓おかき」や濃厚なシュークリーム
など、地元北海道の素材の味を存分に生かした幅広いジャンルの“他にないお菓子”の数々。
北海道に9店舗構えるだけのホリが、年商100億円にまで成長を続けてきた、その裏には、
徹底的に北海道産の原料にこだわり抜く戦略がありました。
牛乳や米はもちろん、リンゴだって可能な限り北海道産。「おかき」に使うのは、えりも町の
昆布に、増毛町の甘エビ、枝幸町のホタテなど、道内を探し歩いて発掘した、おかきの食感や
風味を最高に引き立てる素材ばかり。その上、製品には原料を提供してくれた地域名など、
目立つ様にして売っているのです。人口1万7,000人の田舎町・砂川市から北海道の魅力を
全国に発信し続けるホリ。地域の生産者と一体となって作り上げる地元愛には感服するばか
りでした。
現社長のビジネスの原点は、炭鉱に囲まれた砂川市で父が始めたお菓子づくり。苦労して炭鉱
夫に手作り菓子を売っていた父は、「息子たちに辛い思いをさせたくない」と、現社長を薬科
大学に行かせ、大手薬品メーカーに就職させました。しかし、時代の流れの中で、地元の炭坑が
相次ぎ閉鎖し、父が経営難に陥るや、現社長は会社を辞め、兄と共に廃業寸前だった家業を継ぐ
決意をしたのです。
親子で力を合わせ、北海道中をトラックで回り、懸命にお菓子を売り歩いていた堀一家が目を
付けたのは、夕張で売れ始めていたおいしいメロン。兄は農家へ仕入れ交渉に通い、父が試作、
現社長が生産設備設計。親子3人で必死に商品開発を続け、メロンの果肉をそのまま生かした
「夕張メロンピュアゼリー」を完成させたのです。いまや北海道のお中元ギフト13年連続1位を
獲得するほどの大ヒット商品となった裏には、「絶対に兄弟喧嘩をするな」という父の教えが
あったと言います。
ホリは菓子で稼いだ資金を、ビジネスで支えてくれた地元・北海道に様々な形で還元してき
ました。それが、夕張市で減少するメロン農家の支援。そして、本社のある砂川市では、発売
したお菓子がヒットするたびに砂川市内に工場を建設し、地元の雇用も創出してきました。
特筆すべきことは、高齢者でも長く働けるようにと、重労働のロボット化も進めていたこと。
ロボット化は、通常人件費を下げるために行われるものと思って来ましたが、高齢者の負担を
軽減する為とは、本当に素敵な話です。現在では社員の13%が60歳以上。80歳になる従業員も
元気に働き続けているそうです。
また、祝60周年記念の時には、当初パーティーを企画していそうですが、『社員が喜ぶものを』
という意見をもとに、お金入りの通帳を配布したとか。パートさんも含めて、勤続年数で金額
差をつけて渡されたとかで、地元愛、家族愛もさることながら、人間愛にも溢れている…そん
な印象を受けました。社長の金言…【従業員が誇りを持てる会社をつくる】…納得です。
いつもの村上龍の編集後記では、こんな風に書かれていました。
『「お菓子は人を笑顔にする」創業以来の、ホリの企業理念だ。だが、お菓子は、作り手にも
幸福をもたらすのだと、堀さんと話してそう思った。「もう経営継続は無理だ、店を畳むが、
帰ってくるな」という父親の一報に接し、薬剤師として一家をなしていた堀兄弟は故郷に戻り、
家族一丸となって事業を再興させる。まるで心温まる映画を見るようだ。おいしいお菓子の
数々は、そうやって生まれた。家族の愛情が、お菓子開発への強いモチベーションとなり、
努力や工夫は尽きることなく、そして、多くの人の笑顔につながっていく。』
経営者としての魅力もそうですが、人として、本当に魅力ある素敵な方でした。
この3連休は買い物も控えて、映画『種まく旅人』シリーズを一気に3作見てしまいました。
第1作『種まく旅人~みのりの茶~』(2012年/塩屋俊監督)
第2作『種まく旅人~くにうみの郷~』(2015年/篠原哲雄監督)
第3作『種まく旅人~夢のつぎ木』(2016年/佐々部清監督)
いずれも農業や漁業など、日本の地方で第一次産業に携わる人々の暮らしを、その土地の
風土とともに描いていく物語です。一つ一つご紹介していると、とんでもなく長いブログに
なってしまうので、3回に分けて書こうかとも思ったのですが、細かく書いてしまうより、
興味を持たれた方には、是非ご覧頂きたいと思ったもので、お気に入りのキーワードだけ
ご紹介させて頂きます。
第1作の【みのりの茶】。舞台はなだらかな緑の丘陵が広がる大分県臼杵市。有機栽培で茶畑
と格闘する…デザイナーをリストラされた田中麗奈演じるヒロインが、周りの人に支えられて
成長していく物語。天候に苦しめられているとき…祖父から伝えられる一言…「晴れるのも
ありがたい、雨が降るのもありがたい」。無駄な日なんてない…。人生においても同じで、
毎日が肥やしになっているんだと…
第2作の【くにうみの郷】。舞台は、国生みの郷、淡路島。主役はケンカをして疎遠になって
いる玉ねぎを作る兄と、家を出て海苔を作っている弟が《かいぼり》という作業を通して、
打ち解けていく物語。《かいぼり》は、溜め池の堆積物を定期的に掃除することで溜め池を
維持し、掃除よって吐き出された森の栄養分を豊富に含んだ堆積物は、海に流されて海を潤し、
そしてまた、海の水は浄化されて森を潤すという山と海…自然が一体となって恵がもたらされ
ている事を教えてくれました。
第3作は【夢のつぎ木】。舞台は果樹栽培が盛んな岡山県赤磐市。亡くなった兄の遺志を継い
で、市役所の仕事と桃作りに奮闘するヒロインの物語。映画の中で再三登場する問答が、心に
残りました。
『ここは何処ですか?』
『赤磐です』
『困ったときは、皆が助けてくれる町』
1人で苦しまないで、みんなで支えあっていこうという心温まる問答で、3作の中で共通する
1人では成し得ない作業・・・
第3作で流れる《にこいち》さんの『夢の続き』という歌も良かったのですが、監督も物語の
舞台も違うというのに、第1作『種まく旅人~みのりの茶~』でお茶農家と市役所職員を演じ
た田中麗奈さんと吉沢悠さんが、同じ役の成長した姿で特別出演しているのも面白い演出で
した。
私たちの口に入る食べ物ですが、3部作とも、美味しいものを作る人たちの思い、苦労、支え
る周囲の人たち、欠かせない自然の恵み…そこは沢山の感謝で溢れており、そうした沢山の
思いが美味しいものを産み出しているんだと改めて感じさせてくれました。
お金を払えばどんなものでも食べられる…そんな時代ですが、それを作ってくれる人たちの
事、命を吹き込む自然の恵、忘れずに感謝の気持ちで食べていきたいですね。
ノーベル平和賞が、核廃絶を訴え続け、核禁止条約に貢献したとされるICANに決まりました。
被爆者の声が受賞の原点ということで、核禁止条約に続いて被爆国の日本にとっては、長年の
訴えが、ようやく実ってきている事の証でもありました。
ところが、日本政府は6日、「核兵器廃絶国際キャンペーンICAN」のノーベル平和賞受賞
決定を受け、コメントを出しませんでした。同団体が採択に寄与した核兵器禁止条約の採択に
対して、被爆国でありながら不参加という恥ずかしい立場を選択した政府の姿勢が如実に
表れています。
前日、5日の日系英国人作家カズオ・イシグロ氏のノーベル文学賞受賞決定の際は、安倍首相
が即座に「日本にもたくさんのファンがいる。ともに受賞をお祝いしたい」とのコメントを
発表していたそうですが…。
今年のノーベル平和賞受賞が決定した国際的なNGOの連合体ICANで国際運営委員を務める
川崎さんが6日、アイスランドに向かう経由地の米ニュージャージー州の空港で記者団の
取材に応じています。
川崎さんは「核兵器廃絶のために努力してきた全ての人々への賞だ。被爆者の活動が認めら
れた」と喜びを語られるとともに、「被爆者の皆さんも受賞したと考えるべきだと思うし、
それを誇りに感じてもらいたい」と訴えました。また、7月に国連で採択された核兵器禁止
条約については「今回の受賞をきっかけに、多くの国に一刻も早く署名、批准するよう働き
掛けていく」と強調。条約に反対する日本政府にも再考を促す考えを示しています。
川崎さんは、ICANに参加する国際NGO「ピースボート」の共同代表。ピースボートは2008
年から広島・長崎の被爆者と共に船で世界各地を回り、被爆体験を現地の人々に伝える活動に
取り組んできました。活動に参加した被爆者は170人に上り、既に亡くなった人も多いとの
ことです。
そして遅れる事翌々日の8日外務省の外務報道官の談話…
本年のノーベル平和賞が核兵器廃絶国際キャンペーンICANに授与されることが決定しました。
ICANの行ってきた活動は,日本政府のアプローチとは異なりますが,核廃絶というゴールは
共有しています。今回の受賞を契機として,国際社会で核軍縮・不拡散に向けた認識が広がる
ことを喜ばしく思います。ノーベル委員会は受賞発表の中で北朝鮮の核開発に言及しています。
…以下、話を北朝鮮の話にすり替えて…最後には…広島・長崎の被爆者の方々は,核兵器の
ない世界の実現に向け,被爆の実相を世界に伝えてきました。核兵器廃絶に向けた被爆者・
被爆地の長年の努力に対し,この機会に改めて敬意を表したいと思います。…と。
皆さんは、どの様に感じられたでしょうか…
創設者のノーベルは遺言で、平和賞を「国家間の友好関係、軍備の削減・廃止、及び平和会議
の開催・推進のために最大・最善の貢献をした人物・団体」に授与すべしとしていますが、
近年の選考委員会では「平和」の概念を広く解釈しており、受賞対象者は国際平和、軍備縮減、
平和交渉だけでなく、人権擁護、非暴力的手法による民主化や民族独立運動、保健衛生、慈善
事業、環境保全などの分野にも及んでいます。他のノーベル賞と異なり、団体も授与対象となっ
ているのが特徴とのこと。
日本人絡みでの受賞は、非核三原則やアジアの平和への貢献を理由として、1974年受賞の
佐藤栄作元内閣総理大臣以来のこと・・・もっと称賛されるべきではと思いつつ・・・改めて
多くの人の命を奪い去った唯一の被爆国でありながら、そうした命に寄り添えない政府に
がっかりの出来事でした・・・。自民党・・・。安倍の考えに右ならえは、いつまで続くので
しょうかねぇ・・・
9月28日放送のカンブリア宮殿『ジャパンミラクルで大躍進!外資系食品企業のイノベーショ
ン戦略』ネスレ日本の回、ご覧になられましたか?コーヒーの「ネスカフェ」、日本で最も
売れているチョコレート菓子「キットカット」など、強力なブランド商品を展開するネスレは、
100年以上の歴史を持ち、スイスに本社を置く外資系の老舗グローバル企業です。そんな食の
巨大企業、ネスレの中で、一際業績を伸ばしているのが、日本の現地法人「ネスレ日本」です。
そして、そのトップこそ、日本人初の生え抜き社長となった今回の主役高岡浩三さん。
高岡さんは、11歳の時、父親をガンで亡くされたそうです。祖父も父親も若くして亡くなった
事の影響か、若くして大きな仕事ができる外資系企業を選んだそうです。神戸大学を卒業後、
ネスレ日本に入社し、主にマーケティングを担当。すると41歳の時、大きな試練が訪れ、売り
上げが不振だったキットカットの再生を、5%の成長ではなくて、5年で5倍にしろとスイス
本社から託されてしまいます。
社長就任後、社員の発想力を高めようと、イノベーションアワードを実施。社員のやる気を
上げ、顧客が気づいていない問題点を見つけ、解決していく】という独自のイノベーション
戦略で好業績を続け、マイナス成長をプラスに転じさせます。なんと、与えられた5倍の目標
も4年で達成し、スイスの本社からは「ジャパンミラクル」と称賛されたのです。
そんな社長の金言は、【イノベージョンは 個人の発想からしか生まれない】・・・創業者で
薬剤師のアンリ・ネスレは、母乳で育つことのできない新生児のためにベビーフードを開発
されたそうです。母乳やそれまで一般的だった代替品も受け付けなかった早産児にも効果が
あったことで、瞬く間にヨーロッパで広く販売されるようになったそうです。
そんな前身からか、ソニーと共同でコーヒーメーカーとタブレットで連動できる音声認識シス
テムまで開発しています。この音声認識システムを使うと、タブレットに呼びかけるだけで
簡単にお好みのコーヒーを淹れてくれるのです。このシステムの凄い所は、超高齢化社会を
見据えており、独居老人が難しい操作をすることがなく、対話形式で安否確認もできるので、
地方の自治体も熱い視線をよせており、思わず千葉から離れた仙台で一人暮らす祖父にとも…。
村上龍の編集後記では、こんな事が書かれていました。
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ネスレ、ネスレ日本、両社とも歴史的な企業だが、常に「先端的」だ。印象的だったのは、
イノベーションという言葉のとらえ方だ。ウォークマン、カップ麺など、画期的な製品・
商品開発がイノベーションだと、どこかでずっと思いこんでいた。商品・製品が消費者の
手に入るまで、すべての過程にイノベーションは存在すると、高岡さんに教わった。「創造
的な思考を、ミもフタもなく長時間続けること」まさに真理だ。「アイデアが出ない」とい
う言い訳が無効になる。アイデアが出ないわけではない、充分に考えていないだけなのだ。
一言『イノベーションの新しい定義』
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今回は【イノベーション】という言葉が再三出てきたので、改めてWikipediaで調べてみると、
このように書いてありました。・・・イノベーションとは、物事の「新結合」「新機軸」
「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。一般には
新しい技術の発明を指すと誤解されているが、それだけでなく新しいアイデアから社会的意義
のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い
変革を意味する。つまり、それまでのモノ・仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を
取り入れて新たな価値を生み出して社会的に大きな変化を起こすことを指す。
良い「アイデアが出ない」と嘆きたい時に思い出したいですね…
「創造的な思考を、ミもフタもなく長時間続けること」
まさに真理だ。「アイデアが出ない」という言い訳が無効になる。
アイデアが出ないわけではない、充分に考えていないだけなのだ。
10月3日放送のアナザーストーリーズ「羽生善治 史上初の七冠制覇~ヒーローに翻弄された
男たち」ご覧になられましたか?
1996年2月14日。一人の若者が、前代未聞の偉業を成し遂げました。御存知、羽生善治棋士。
将棋界にある7つのタイトル「名人、竜王、王位、棋王、王座、棋聖、王将」を全て制覇して、
1,000年以上にも及ぶ将棋界において、史上初となる七冠制覇を成し遂げてしまったのです。
その大記録に日本中が将棋ブームとなって、棋士が公文の宣伝に出るという注目度。それまで
あり得なかったグッズ販売まで巻き起こってしまいました。しかし、七冠制覇の裏で、大きな
人生の分岐点に立たされた人たちがいたのです。
その一人目が、七冠をかける王将戦で、最後の対戦相手となった谷川浩司棋士。羽生の七冠
制覇を前年は阻止したものの、1996年には立て続けに3勝と羽生に先行され、その日も、なす
すべもない状態で終盤を迎えていました。1995年の闘いの後は、七冠への挑戦切符など、そう
そう得られるものではないから、翌年も同じように七冠を阻止するための闘いになるとは思っ
ていなかったそうです。
羽生さんが七冠を制覇した瞬間、報道陣は一斉に谷川さんの後ろに回って、谷川さんの背中
から羽生さんめがけてフラッシュを浴びせました。かつては自分が逆の立場だっただけに思い
出したくもない屈辱だったようですが、そんなシーンの前、まだ戦っている最中に、背後に
あったお菓子などを片付けるように主催者にすすめていたのですから、早い段階から覚悟を
決めておられたんですよね。
それでも、自分らしさを失って、まともに戦えなかった事に気づいていくと、再び王将戦の
タイトルを奪い返すまで復活していくところなど、流石の谷川さんでした。ボロボロに噛ま
れた将棋の駒は、負けず嫌いの谷川さんの性格が伺えて、面白く見させて頂きました。
羽生さんの小学生時代からのライバル森内俊之棋士。しかし、羽生さんは、いつも一歩先を
歩いていました。天才羽生の存在に人一倍苦しみ、なかなかタイトルも取れずに自分を見失っ
ていく森内さん。羽生さんとの対戦成績は、大きく水をあけられている訳ではなかったのに、
結果を出せずにいた森内さんが悩んだ末にたどり着いた答え。それは、自分の粘り強さでした。
そして、その粘り強さをフルに発揮できる、持ち時間の長い名人戦でタイトルを奪取すると
5期にわたってタイトルを奪取し、羽生さんより先に永世名人の資格を勝ち取ったのです。
それまでの将棋のイメージを変え、現代将棋のパイオニアとなって、今話題の藤井聡太棋士の
登場にも影響を与えたのではないかと思える羽生さん。それまでの将棋を軽んじたと様々な
バッシングを受け、苦しんだ革命時の羽生さんは、一時期は『自分は、道を踏み外してしまった
のではないか』とまで思い悩んだそうです。
そんなバッシングをはね除けての、七冠への2度目の挑戦…そして、勝利…凄い人です。
面白かったのは、小学生の時に作られたという飛車を3枚使う詰め将棋。飛車が3枚など、あり
えない話なんですが、将棋道場の先生に注意されると、『だって3枚ないと、つまんないんだ
もん』と返してきたそうです。常識、定石…そんな型にハマらない考え方が、強さの源なんで
しょうね。
将棋を始めて、たった2年で四段まで上り詰めたという羽生さん。AI将棋電王戦で君臨して
いるPonanzaがありますが、対抗できる数少ない棋士だと私は思っているのですが…
9月30日テレビ東京で放送された『起業人のキセキ 業界の常識を打ち破れ』ご覧になられまし
たか? 番組では3人の起業家が紹介されていました。
1人目はairClosetの社長さん。洋服は自分で選ぶという常識を打ち破って、プロのスタイリスト
が毎月3着の服をコーディネートして、素敵な箱に収めて贈ってくれるというインターネットビ
ジネス。
2人目は、『100年後は世界一になる』と語るライフネット生命の社長さん。今はコメンテー
ターとしても活躍されている出口さんと組んでの会社設立。余計な固定費を削減することで
生命保険料を格安にしてしまったことは有名なお話。
そして、3人目が、『車椅子は押して動かす』という常識を打ち破った株式会社ジンリキの社長
さん。車椅子が、わずか1㎝の段差すら、簡単には越えられないことを、恥ずかしながら初めて
知りました。今回初めて知った会社なので、この『JINRIKI』の社長中村さんについて、今日は、
お話ししたいと思います。
中村さんの4歳下の弟さんは、生まれて間もなく小児麻痺を患い、車いす生活を余儀なくされ
たそうで、幼少期を共に過ごした弟さんは13歳であまりにも短い生涯を閉じたそうです。
一度は『引く』という車いすの発想を思いつきながら断念していた中村さんですが、東日本大
震災をきっかけに『自分にできることは何だろうと、改めてもう1回考えたときに…。もしか
したら、1人でも2人でも…。やるべきことはそれかなと思い…。』JINRIKIを形にする取り
組みが始まったそうです。
この【押す】のではなく【引く】車いすは、介助する人の負担を軽減するだけでなく、これま
で難易度の高く、行ける所が限定されていたのを開放し、災害の避難経路すら健常者と変わら
ない時間で移動する事を可能にしていました。東日本大震災が起こってから、車いす生活だっ
た人は、何かあった時は、他の人と同じように生き抜けないと諦めていた方も居られたようで、
この車椅子の存在を知った事で『あなたは命の恩人です』と『これで皆と同じように生きていけ
ます』そう話してくれたそうです。
中村さんは、全国の観光地にも積極的な働きかけを行っており、和歌山城では、忍者に扮した
スタッフがJINRIKI付きの車いすで案内してくれるそうです。車いす利用者にも気兼ねなく来て
もらうためJINRIKIを採用する観光地は増えているとのこと。また、昨年インドで行われた障害
者について考える世界会議にも招待されるなど、確実にその裾野を広げています。
最後に中村さんは、こんな事を話されていました。
『圧倒的足りない部分は皆さんのサポート体制というかケア』『大丈夫ですよ、前輪持ち上げ
ますよ、「ひと言」声をかけて手伝っていただけるこの状況が、もっともっと広がればホント
の意味でのバリアフリーになった。』『今の状況の中でやるべき事は、もっともっと皆さんに、
一般の方が、全員が、「誰でも車いすを押せますよ。」更にJINRIKIを使ってどこでも行けます
よ。』そんな車いす利用者にとって本当の意味での優しい世界を目指したいと話されていたの
です。
番組の中では、実際に進行を務める人たちが【引く】車椅子と【押す】車椅子の違いを体験
されていましたが、貴重なシーンだったと思います。『これで皆と同じように生きていけま
す』というメッセージ、暫くは頭から離れそうもありません。知る事、大切ですね。
昨日に続いて、NHKスペシャル『「人体」“腎臓”があなたの寿命を決める』ご覧になられまし
たか?普段あまり意識しない「腎臓」が、なんと寿命をも左右する、人体の「隠れた要」だ
というお話。10月1日の「人体」第1集・腎臓では、そんな「腎臓の知られざる正体」について
放送されたのです。中身は言うまでもなく濃いものでしたので、ここで全てについて触れる
ことなど、とてもできませんので、是非、見逃された方は再放送を録画してでもご覧頂ければ
と思います。
腎臓が血液をろ過しておしっこをつくる際、同時に、巧妙な仕掛けによって「血液の成分調整」
を行っています。腎臓の本当の役割は、血液の成分を厳密に適正に維持する、「血液の管理」
だったのです。その時その時、体にどんな成分がどれだけ必要なのか。「再吸収」を行う際、
腎臓はさまざまな臓器から情報を受け取って、血液の成分を絶妙にコントロールしています。
まさに「人体ネットワーク」の要ともいうべき存在だったのです。
つまり、腎臓の異常が全身のほかの臓器にも悪影響をもたらし、逆にほかの臓器で異常が起き
ると、その影響が腎臓に及びます。世界中の医学論文を解析したある研究では、入院患者全体
のうち5人に1人が「急性腎障害(AKI)」という症状を発症し、命のリスクにさらされている
ことが明らかになってきました。気づかずに放置すれば、腎臓の障害が全身のほかの臓器にも
飛び火し、「多臓器不全」を起こして死に至ることも少なくないというのです。
治療のために投与される薬などが腎臓に負担をかけていることも、その一因になっていると
指摘されています。命を守るために、常に腎臓を見守る。そんな新しい医療の発想が、取り
上げられたイギリスの病院では、既に導入されていました。心拍数だけでなく、腎臓の状態も
常に監視していたのです。
私事ですが、昨年の秋に、健康保険協会から慢性腎臓病(CKD)の疑いがあるという通知が
突然届きました。理由は、その指標となる推算糸球体濾過量(eGFR)が低い状態が何年も
続いているからという事でした。ちなみに、このeGFRは血清クレアチニン値と年齢と性別から
計算でき、『知ろう。ふせごう。慢性腎臓病(CKD)』という協和発酵キリン株式会社サイトの
トップページ右下の『調べてみようeGFR測定』というボタンをクリックする事でも、簡単に
診断が出来ます。
で、元に戻りますが、番組の前半で触れられた『腎臓を鍛える』…というお話。
標高およそ2,000mにあるプールで行われる競泳選手による【酸素の薄い】「高地トレーニ
ング」。トレーニングを始めて間もない練習後、血液中の酸素量(血中酸素飽和度)を計測
すると、80%台。平地では通常96%を切ることはないそうです。体がたいへんな酸欠状態に
陥っていったというのです。
ところが、それから2週間後。ふたたび練習後に測定を行うと、90%を超える値に回復して
いました。「高地順応」と呼ばれる現象で、体が酸素の薄い環境に見事に適応したのです。
このとき鍛えられていたのが【腎臓】。体内に酸素が足りなくなると、それを察知し、
「酸素がほしい!」という腎臓からのメッセージを全身に伝えます。
これによって骨の内部、「骨髄」では、酸素を運ぶ「赤血球」が増産され、体中に効率よく
酸素を運べるようになるのです。実際、高地トレーニングを行うと、2週間ほどで赤血球が
大幅に増えるそうです。
腎臓機能が弱くなっていると言われてしまうと、こうした番組を見た後に思うのは『私って
短命なのか?』と落ち込んでしまうこと…。沢山止められない薬を飲み続けて腎臓に負担を
かけているし…。
そして、『腎臓を鍛える』という話を聞いてしまうと、『私も高地トレーニングすれば?』
って、思ってしまいますよねぇ…。この年で、そんな事をしたら、腎臓の前に心臓が止まって
しまいそうです…。思考が単純すぎますかねぇ…。でも、『腎臓にも思いやりが必要』だとは
痛いほど感じる事が出来ました。
【第2集“脂肪と筋肉”の会話がメタボを治す】…またまた私に深く関係しているテーマのよう
で、11月5日(日) 21時〜の放送となっています。お見逃しなく!!私も、見逃さないようにしな
くては・・・
9月30日から始まったNHKスペシャルの新シリーズ【人体 プロローグ「神秘の巨大ネット
ワーク」】ご覧になられましたか?『驚異の小宇宙 人体』が放送されてから、もう28年経過
していたんだと知りましたが、その時司会をされていたタモリさんと、なんと、あのノーベル
医学・生理学賞を受賞された山中伸弥先生が司会進行をされていくのです!!
前シリーズの【驚異の小宇宙 人体】も、とても面白いものでしたが、このシリーズは、もっ
と凄い事になりそうです。番組概要としては、このようにホームページに書かれておりました。
********************************
今、医学の世界で、これまでの「人体観」を覆す、巨大なパラダイムシフトが起こりつつあ
ります。今までは、人体のイメージと言えば、「脳が全体の司令塔となり、他の臓器はそれに
従う」というものでした。ところが最新科学は、その常識を覆しました。なんと、「体中の
臓器が互いに直接情報をやりとりすることで、私たちの体は成り立っている」。そんな驚き
の事実が明らかになってきたのです。
このいわば「臓器同士の会話」を知ることで、いま医療の世界に大革命が起きています。
例えば、がんや認知症、メタボなどの悩ましい病気を克服する画期的な方法が成果をあげ
始めているのです。
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新たな医学の潮流の全貌を翌日の10月1日から、殆ど毎月月初めの日曜日、全8回にわたって
紹介していく新シリーズ「人体」。プロローグでは、最先端の顕微鏡技術でとらえられた
驚異の体内映像と、がんを早期に発見する画期的な検診方法や、がんの再発を防ぐ新たな
治療方法などの最前線を分かりやすく紹介しながら、シリーズへの期待感を膨らませてくれ
ました。
息をのむ映像美! 全く新しい健康常識!神秘的な体の秘密を解き明かしていく知的エンター
テインメント!肺、心臓、胃など、さまざまな臓器があることは知っていますが、状況に
応じて、一糸乱れず働いてくれるのは、臓器同士がメッセージ物質を利用して情報交換を行い、
支え合って働いているからなんだとか…。
レゴブロックを使って、メッセージ物質が会話する様子をスマホ画像に映し出し、博多弁で
会話させることで表現していく・・・。どうかという気もしましたが、より楽しく、身近に感じる
には、むしろ良い方法だったのかもしれません。整形外科医からスタートされた山中先生が、
関節リウマチの患者と出会い、研究者を目指したことなど、ちょっとした話も興味深く聞く
事が出来ました。シリーズ今後がとても楽しみです!!初回から見逃されてしまった方!
是非、再放送は予約録画してご覧ください!!
9月21日放送のカンブリア宮殿『回転寿司からユニーク炊飯器まで!コメのプロ集団の革新的
おいしいコメビジネス』の回、ご覧になられましたか?長期にわたって政府の管理下に置か
れてきたお米業界。今回の主役【神明】は創業115年のお米卸最大手企業ですが、日本人の主食を
守ろうと、とにかくあの手この手で、保守的だったお米ビジネスの中で、業界を驚かす革新的な
取り組みを続けてきていました。
安くて安定した味を楽しめる『ブレンド米』をいち早く一般消費者向けに販売し、ヒットさせ
たのがこの神明。お米はお米屋で買うのが当たり前だった時代に、業界に先駆けてダイエー等の
スーパーでの販売に道を開いたのも、この会社。
それにしても驚いたのが、「わずか10分で炊ける炊飯器」。業界最速“10分炊飯”を可能にした
秘密は、特許技術を駆使した特別なお米。無洗米だから、忙しい独身生活の人でも、帰宅後
水を入れて炊飯器に投入しスイッチを入れてしまえば、着替えている間に炊けてしまうという
超便利な世界。さらには、お米農家が「毎日食べたい」と絶賛する、無添加・異臭無しのパック
ご飯も開発。業界最大手ならではのこだわり技術を詰め込み、「炊いたご飯と変わらない」
味を実現しています。
また、飲食店も多角経営、自慢のお米を提供しています。サバ料理専門店の「サバープラス」
では玄米と白米を黄金比率でブレンドした特殊なお米を提供。寿司チェーン「魚べい」では、
独自ブレンドのお米を使い、客から「シャリがおいしい」と評判を集めていました。新規で
オープンさせた「直営おにぎり店」では、お米の種類から中に入れる具材・塩とオーダー時
に選択する形になっていて、注文を受けてからの完全オーダーメイド。本当に美味しそう
でした。
このように、お米に関するビジネスを川上から川下まで全面展開し、お米を直接消費者の口元
に届ける事業を拡大させたことで、お米の消費が減り続けているにも拘らず、神明の業績を
順調に押し上げてきたのです。
素敵だったのは、病気に強いお米の新品種を見つけて、農家に推奨し、収穫したお米を全量
買い取りして、ローソンの店舗へ卸している事。生産者と大手小売りを結びつけ、農家の
収益アップにつなげる取り組みです。さらに、耕作放棄地も何とかしたいと、バナナの栽培を
薦めていて、「どうして、そこまで…」と思えるぐらい素晴らしい取り組みを続けておられ
ました。
いつもの社長の金言は『お米の消費拡大で日本の農業を守る』でしたが、説得力のある言葉で
した。村上龍さんの編集後記・最後の一言では『ご飯の「幸福」』と書かれていましたが、
あの握りたての温かい【おにぎり】を食べると、本当に幸せになれるし、それだけに、こう
した【神明】という会社、有難いですよね。今回は【さらに】という言葉を連発していますが、
驚きの連続で、感謝感謝の物語でした。やっぱり日本人は【お米】ですよねぇ・・・。