4月30日に放送された未来アイズ『流体医工学研究室』の回、ご覧になられましたか?
みんなが苦手な注射。針のない…痛くない魔法のような注射器があったなら、きっと、
注射が嫌いで泣きわめく子も格段に減るでしょう。
そんな今までの常識を覆す夢のような注射器を新開発したのは九州大学工学研究院機械工学
部門流体医工学研究室工学博士の山西先生。この研究室は医療機器やデバイスを作る研究室
ですが、先生が挑むのは、今までの常識をくつがえす医療デバイスとして注目される、針の
ない気泡の注射器。
山西先生は連日、マイクロ磁気ロボットで、人間の組織に似せた鶏のささみを使って細胞
レベルで切るための実験を繰り返してきました。この実験では、電力の出力調整を最適化
しないと、細胞が焦げるなどのダメージが生じます。かといって、出力を小さくしすぎても、
気泡が出たり、組織の蛋白質がくっついたりするなど、失敗に次ぐ失敗の連続でした。
かくして、何も形にならないまま2年が経過し、追いつめられながらも、毎日努力を重ね続け
た山西先生。ある日、電気メスが壊れ、先端が吹き飛んだのに、細胞が切れる事があって、
その原因をハイスピードカメラの映像で探ったところ、極小の気泡の高速噴射により、細胞が
切れるということが分かったのです。この発見は、多くのメディアでも取り上げられ、2015年
に山西先生は、科学技術に顕著な貢献をした研究者に送られる「ナイスステップな研究者」に
も選ばれました。
そんな山西先生の研究にいち早く目をつけたのが、ベックスという会社。1年以内の実用化を
目指してできあがったのが、パルス装置です。これは、1種類のメスで高精度に電圧を変えて、
気泡のスピードやパワーを自在に操る機械。実用化すれば、体のあらゆる部位に使える電気
メスとなるそうです。
こうした原理を利用すれば、「メディカルだけでなく、アルミニウムやポリマーなども切れ、
あらゆる可能性を秘めたデバイスになり、いずれはメディカル利用としてインシュリン注射
などで実用化を目指したい」と山西先生は話しています。これらのデバイスが実用化されれば、
病気で注射が必要な子供たちでも痛みを感じずに治療が受けられるようになります。まさに、
これまでにはない、夢のデバイス。
そんな山西先生の座右の銘は、「信ずれば通ず」。ひたすら研究に没頭し滅多に休みのない
先生のプライベートは、「ただひたすら寝る」と笑いながら答える山西先生、優しそうで
とても熱い一面も持っておられる、素敵な方でした。