6月14日放送のカンブリア宮殿『思わず住みたくなる!新発想』の回、ご覧になられましたか?
入居率98%、見学したら住みたくなると圧倒的支持を受けているサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀(ぎんもくせい)」が今回の主役。高齢者向け住宅というと、あまり良い印象を持てない事が多いのですが、この「銀木犀」は、全く違いました。これまでの高齢者住宅のイメージを覆し、なぜか近所の子供たちが集まり、認知症にも徹底対応してくれる素敵なお家。
何故か…昔懐かしい駄菓子屋さんから映像は始まっていきます。子供たちはお菓子を買うと、そのまま中へ入り、くつろいでいます。店を切り盛りするのは、87歳の式守(しきもり)さん。計算が分からなくなる時には、子どもたちがやってくれると、何ともおおらか。この駄菓子屋さん、なんと高齢者住宅「銀木犀」の一角に入っているのです。
「銀木犀」は、いわゆるサービス付き高齢者住宅で、現在千葉と東京で9カ所を展開。入居時の費用ゼロ円!家賃、共益費、食費、生活支援サービス込みで月々20万円位~。入居率98%入居者の平均年齢は85歳で、重度な認知症の方も受け入れているのたでそうですが、何故か入居すると元気になったりすると言う不思議なところ。
「銀木犀」をつくったのは異業種からの参入者、下河原さん。鉄鋼会社を営む家の長男だった下河原さんは、2000年シルバーウッド(建設会社)を設立すると、やがて高齢者向け賃貸住宅の建設を請け負うようになります。これを機に、自前の高齢者住宅を作ろうと、国内外の高齢者施設を視察。北欧で見たのは、最後の時を迎えるギリギリまで自宅で過ごし、ワインを飲んで踊ったり楽しそうにしている姿でした。本人の意思が尊重され「寝たきり」もいない。「どうして日本はこんな当たり前のことができないのか」涙が出たと言います。
満を持して2011年、第1号となる銀木犀をオープン。さりげない見守りと、住居としての快適性を追求しました。銀木犀では一般的な高齢者住宅で敬遠されがちな「看取り」に対応しています。看取りとは、まさに死期まで見守り看病することですので、敬遠する高齢者住宅は少なくありません。高齢者住宅の看取り率が平均17%なのに対して、銀木犀は76%と驚異的な数字。鉄鋼会社の跡継ぎという異端児が手掛ける高齢者向け住宅の新しい形…素晴らしかったです。
下河原さんが「看取り」の支援に力を入れるきっかけとなったのは、一人の入居者との出会いでした。施設をオープンして間もなく入ってきた末期の乳ガンだった白井さん(仮名)。白井さんは下河原さんに「私はここで死にます」と話したそうです。下河原さんは戸惑いましたが、元看護師だった白井さんは「大丈夫、死に方は私が教えてあげます」と言ったのです。
「自分は自宅のようなところで自然に亡くなりたい」という強い意志を持っていた白井さん。下河原さんは、最後まで彼女を支えて行く覚悟を決めたのです。思えば「病院は元気になるために来るところ」…白井さんは薬も延命治療も受けず、食欲のない時に無理に食べさせようとすると「しつこい」と怒って言ったそうです。「良かれと思ってやる事も、本人にとっては違う事がある」と思い知らされた下河原さんは、だからこそ、【見守り】に、【看取り】に力を入れるようになったそうです。
そんな、下河原さんは、多くの認知症の入居者と触れ合う中で、徘徊も暴力にも理由があり、接し方に問題があると思うようになっていきます。又、一般的に「認知症になった人は宇宙人と思え」と言った誤解が多い事を知っていく中で、「認知症は、家族や地域社会で共存できるものだ」ということを多くの人に知ってもらうための活動を始めています。
セブンイレブンの社員を迎えての研修会の様子が紹介されていましたが、こんな体験の場、もっと沢山あるといいですよね。なんとも涙が出てくるくらい素敵な話ではありませんか。若い社長さんでしたが、損得抜きで、本当によく頑張られていました。
いつもの村上龍さんの編集後記では、こんな風に書かれていました。
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子どもや高齢者に対し、距離感をもって「見守る」のはむずかしい。べったりとそばに付き、手取り足取りで「制御」するほうが簡単だ。シルバーウッドは、高齢者住宅の快適さがクローズアップされがちだが、その快適さは「見守る」に支えられている。ところで「認知症」は、病なのだろうか。医学的対応は必要だろうが、より大切なのは、わたしたちの社会が、認知症を理解し「受け入れる」ことではないか。「社会的な見守り」が実現すれば、認知症を巡るリスクもコストも激減する。下河原さんは、本気で実現させようとしている。
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国が取り組まなければならないような活動ですが…ここにも若い力が注がれていました。本当に心のこもった活動、優しく強い社長さん、頼もしい限りです。
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