先日、NHKの7月9日放送のBS1スペシャル「ラスト・ドライブ」の再放送を見ました。
死を前にした人の最後の願いをかなえようという終活プロジェクトがヨーロッパで静かに
広がっているそうで、番組では、ドイツが取り上げられていました。
ドイツでは3年前から「願いの車」という名の車が旅を続けています。国籍も人種も問わ
ない無料のサービスです。普通ではお金がかかりすぎて実現できませんが、寄付で賄われ
るので、本当に夢のような話です。
医療従事経験のあるスタッフとボランティアが、本人や家族からの依頼をもとに人生最後
の旅のプランを作っていきます。同伴家族が居なくても介護師や救護資格を持った人など
ボランティアスタッフが無料で同行していくのです。
死にゆく人が最後に願う場所に行くお手伝いをする「ラストドライブ」。救急車を改造し
た車は「願いの車」と呼ばれ、ボランティアがラストドライブを介添えします。「死」と
いう人間の孤独な宿命と、人と生きることを考える番組ということでしたが、本当に色々
と考えさせられました。
番組を作られたディレクターさんは、心に残った言葉について、こう話されていました。
『家で死にたい末期患者を診ているお医者さんの言葉です。「ラストドライブ」そのも
のを否定する言葉ですが、名言だと思いました。
【願い事は、死の直前まで放ったらかしにせず、元気なうちに叶えておけばいいんです】』
印象に残った84歳で末期のがん患者マグダレーネさんの願いは亡くなった夫とよく行って
いた海。それも夫と行っていた海とは違う海に行きたいという願いでしたが、同行した
ボランティアの人たちの優しさ・思いやり…徐々に心を開いて喜びを言葉で表現出来るよ
うになっていくマグダレーネさん。
行った海はドイツを出たオランダの海。海岸には、既に終活で先行しているオランダが、
足の不自由な人でも海岸沿い…海水の近くまで行けるように作られた特別な手押し車。
本来、これほどまで病んでしまうと眺められない景色でも、叶えてもらえる…。本当に
幸せそうにしている笑顔のマグダレーネさんがとても印象的でした。
終末を迎えて逝く人たち、みんなが幸せに過ごせた訳ではないけれど、見知らぬ人でも
寄り添ってくれる人がいることが、どんなに心を癒してくれることか…。後日、願いが
叶った人を、旅に同行したボランティアが、再び訪ねて、『他に願いはないか』と訪ねると、
【何もない】…そう仕草で示したそうです。
尋ねた人は、最後の願いを叶えてもらったことで、
【死を受け入れる心構えができたのでは…】と話されていました。
1人1人、どんな終末を迎えていくのか分かりませんが、『願いの車』…
高齢者が多く、がん患者も多い日本でも、広がっていくような気がしました。
とても感慨深く、また、とても素敵なお話でした。