東京商工リサーチの調査で、2024年の全国企業倒産(負債総額1,000万円以上)件数が1万6件(前年比15.1%増)、負債総額は2兆3,435億3,800万円(同2.4%減)だったことが報じられました。件数は、3年連続で前年を上回り、2013年の1万855件以来、11年ぶりに1万件を超えています。負債額1億円未満が7,478件(前年比15.1%増)と全体の約7割(74.7%)を占めていました。2024年は円安基調に乱高下が続き、物価上昇に歯止めがかからず、人手不足や最低賃金の引き上げなどで人件費も上昇し、幅広い分野でコストアップに見舞われました。また、コロナ禍の資金繰り支援で生じた過剰債務の解消が遅れ、企業収益に負担となって圧し掛かっていました。人手不足の深刻化(求人難による倒産が114件と前年比で倍増)による関連倒産は前年から81%増。内訳は求人難が96%増、人件費高騰が76%増、日本銀行の追加利上げも中小の資金繰りを苦しめたとされています・・・。
2024年の倒産件数は前年比較で15%増の1万件を越えましたが、その99%を占めているのは中小企業。政府は総合経済対策を閣議決定し、急増する「物価高倒産」への対応急務として昨年11月29日、新たな総合経済対策の裏付けとなる、約14兆円の補正予算案を閣議決定しました。その総合経済対策は、①日本経済・地方経済の成長、②物価高の克服、③国民の安心・安全の確保の3本柱で、なかでも物価高対策が急務という話。024年1-11月の「物価高倒産」の累計は877件と、過去最多の2023年の年間合計(775件)をすでに大きく上回るなど、企業の収益環境に与える影響は大きい。2025年も物価上昇の動きは当面続くと見られるなか、収益改善のポイントとなる「価格転嫁」は、中小にとっては簡単なことではありません。大卒初任給を30万円や40万円台にできる大企業は、これまで搾取してきた分を政党に配布できるのでしょうが、コスト転嫁のできない貯えもない中小にとっては国の支援でもない限りと思わずにはいられません。ところが、メディアでは、こんなニュースも取り上げられていました。
冬のボーナス、過去最高 89万円、4.9%増 (厚労省調査)
厚生労働省は1月17日、主要民間企業の2024年冬の一時金(ボーナス)について、平均妥結額が前年比4.93%増の89万1460円だったと発表しました。33年ぶりの高い賃上げ率となった24年春闘の結果が反映され、19年以来5年ぶりに過去最高を更新しています。全21業種中18業種が前年を上回っており、機械は22.99%、サービスは13.02%それぞれ伸びたそうで、食料品・たばこは16.76%減、金融・保険も7.77%減とのこと。また、こんなニュースも・・・
初任給大幅増、中小企業は二の足 現社員の士気に影響 「大企業との格差拡大」
賃上げ原資に乏しい中小企業が大企業並みの初任給に引き上げるのは極めて困難だ。民間シンクタンク、産労総合研究所(東京都千代田区)の調査によると、2024年度入社の新卒社員の初任給は従業員数299人以下の中小企業で21万8118円(大卒平均)。前年度から3・1%増えたものの、30万円台が相次ぐ大企業の水準には到底及ばない。中小企業が初任給の大幅増に踏み込めないのは現社員の賃上げが思うように進んでいないから。コスト上昇分を価格に反映した割合を示す「価格転嫁率」は49・7%と「道半ば」で、賃上げ原資の確保に苦しむ中小企業はなお多いのです。大和総研の神田慶司シニアエコノミストは25年度の初任給ついて「中小企業も引き上げ率が前年度並みかそれを超えるとみているが、賃上げ競争にはついていけず、大企業との格差は拡大しやすい」と予測する。
「とても大企業のような金額は出せない」。中小企業からはため息交じりの声が聞こえてきそう・・・。それでも、こんなニュースと共に流れてきたのが、日銀は2024年に2回の利上げの断行に続き、植田和男日銀総裁が2025年も利上げをする意向を示したというお話・・・。正直、「全国企業倒産件数が前年比15.1%増」と「冬のボーナス、過去最高。大企業の初任給大幅増」という相反するようなニュースを聞いて違和感を持たない人がいるのかと思ってしまいます。そんな真逆な話がありながら、日銀は中小企業の苦しさは無視して利上げを断行していくのでしょうか・・・。
「このままでは令和恐慌まっしぐら」こんな見出しのニュースを目にしたのは、つい先日のこと。闘う経済アナリスト・森永卓郎さんの連載「読んではいけない」。今回は「政府・日銀の金融政策」について。森永さんは日本経済衰退の大きな要因は、労働生産性の低さなどではなく、「政府と日銀の財政・金融政策の失敗にある」と指摘したのです。
内閣府が昨年12月23日に発表した国民経済計算の年次推計(2023年)によると、日本の1人あたり名目国内総生産(GDP)は3万3849ドル。韓国に抜かれ、経済協力開発機構(OECD)加盟国中22位に後退しました。韓国と日本の1人あたり名目GDPが逆転するのは比較可能な1980年以降で初めてのこと。主要7カ国(G7)ではイタリアの3万9003ドルを下回り最下位となっただけでなく、2022年の3万4112ドルから250ドル以上減少し、G7のなかでマイナス成長となったのは日本だけという酷い状態。
日本経済がマイナス成長となった理由について、エコノミストなど専門家と称する人たちのほとんどは、少子高齢化による人口減、円安、労働生産性の低さを挙げていますが、その分析は本質を突いていないというのです。人口減や円安がまったく影響を与えていないとは言いませんが、1人あたりGDP後退の大きな理由はズバリ、政府と日銀の財政・金融政策の失敗にあるというのです。増税ありきの緊縮財政に邁進する財務省の愚行はいわずもがな、日銀がミスジャッジを重ねており、これが日本経済を衰退させていると分析しているのです。
今の世界経済は金融緩和が求められているのが実情。実際、欧米などの主要国は軒並み利下げをしているのですが、日銀だけは2024年に2回の利上げを断行し、2025年も利上げをする意向を示し、金融引き締めの継続を隠さないのです。
実は約100年前に濱口雄幸政権が同じ失敗を犯していたというのです。財政と金融の同時引き締めを行なった結果、1930年から昭和恐慌に突入。巷には大量の失業者があふれ、農村では娘や妻が身売りを余儀なくされるなど、国民生活は悲惨を極めたのだそうです。当時と同じことを行なえば日本経済は墜落するに決まっている。このままでは昭和恐慌さながらの「令和恐慌」まっしぐらだろうというのです。
2025年に入ったばかりで、まだ、この1年がどうなるかは分かりませんが、多数を占めている中小企業が、しっかり社会の責任を背負って活躍できる世の中であってほしいものです。
追伸・・・そう言えば・・・蛇足ですが・・・2025年1月16日でガソリン補助金が廃止されました。これに伴いガソリンの小売価格が高くなり、国民の生活への影響が懸念されています。そもそもガソリン補助金とは、ガソリン価格を抑えるために国が石油元売りに支給しているお金のことで、正式には「燃料油価格激変緩和補助金」といいます。この補助金は、原油価格の高騰を受けて政府が2022年1月に導入しました。当初は3ヶ月間の予定でしたが、ロシア・ウクライナや中東問題などの世界情勢を受け、延長されていたのです。打ち切りは段階的に行われてきました。まず2024年12月19日からガソリン基準価格と高率補助発動価格の間の「差額補助」の割合が60%から30%へ引き下げ。そしてその30%の補助も、1月16日からついに無くなったのです。ともあれこうした変化で、実際のレギュラーガソリン価格は1リットルあたり5円の値上げ、16日からさらに5円の値上げと、わずか1ヶ月の間で10円も値上がりしてしまうことになりました。
一方、「早くガソリン暫定税率の廃止をしてほしい」「政府はガソリン暫定税率の廃止を早急に議論すべき」といった声も見受けられます。ここでいうガソリン暫定税率とは、本来のガソリン税にプラスして課されている25.1円分のことをいいます。もともと、暫定税率はたまたまその時に策定された道路整備計画を進めるために、道路の建設や整備で足りなかった資金を補うという、臨時の「副収入」のような税制度として1974年に導入されたものですが、ガソリン税に石油石炭税・温暖化対策税、これらに消費税10%が加算される展開。
登場以来随分経過しているにもかかわらず道路整備計画でもこの臨時の暫定税率をあてにして、延長に延長を重ねていきます。さらに2008年には「道路整備にあたって、道路を使っているクルマ利用者から税金を取ろう」という方針が「全部の税金から道路整備用に捻出する分を考えよう」という、いわゆる「一般財源化」に変更されます。一般財源化によって、そもそも暫定税率が誕生した目的から、だいぶかけ離れてしまったことは否めません。このことから国民だけでなく、JAF(日本自動車連盟)や自動車産業からも廃止の声が相次ぎ、ようやく2024年12月11日に行われた自由民主党、公明党、国民民主党の幹事長会談で「ガソリン減税(ガソリンの暫定税率の廃止)」について合意がなされています。
ところが2024年12月20日、自民・公明両党から発表された「令和7年度与党税制改正大綱」において「ー、いわゆる『ガソリンの暫定税率』は、廃止する。上記の各項目の具体的な実施方法等については、引き続き関係者間で誠実に協議を進める」と明記され、晴れて「暫定税率が消滅」する“方針”が決定したのです。しかし実際にはまだ協議段階。いつ度のタイミングで廃止されるかといった具体的なスケジュールは白紙。一応、税調などは2025年を通して時期や廃止の方法について議論を重ねていくとしていますが・・・。
これについて、SNSでは「実施時期を公表しないのは実質的にやらない公算が強いのでは」「全く議論が進んでいないように見える。早く、暫定税率を廃止する話を進めてほしい」「税収が過去最高になってるんだから、もっと国民の為の政治をして」と、“やる宣言”をしたものの、構想段階で全く動いていないことへの厳しい指摘もあります。この直近での「補助金の廃止」「暫定税率廃止検討」と、一般のクルマユーザーにとっては死活問題な大転換期が巻き起こったガソリン事情ですが・・・ここにも弱者への配慮のなさが目立つばかりと感じてしまうのは、少なくないはず・・・
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