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【人生100年時代を生きる】『第2回 命の終わりと向き合うとき』を観て

2018-12-19 NEW!
カテゴリ:つぶやき

 

NHKのシリーズ「人生100年時代を生きる」、第2回のテーマでは『終末期医療』について扱われていました。ゲストの阿川佐和子さんは、3年前に父・弘之氏を、延命医療をしないで自然な形で看取った経験の持ち主。「穏やかな最期はどのように迎えることができるのか」、悩んできたそうです。

 

これまで国は社会保障費の抑制を図るため、高齢者の最期を支える場所を「病院」から「自宅」へと方針転換。にもかかわらず、看取りの段階になって病院に運ばれ、そのまま延命医療を長期間受け続けてしまうという事態が頻発していました。最先端の医療設備が整う救命救急センターでは、80歳以上の高齢者が次々と運び込まれてベッドが満床になることもあるそうです。家族は、意識が戻らないまま横たわる親の姿を見て「こんなはずではなかった」と悔いることになります。

 

番組では、学会と連携して、全国の救命救急センターへの調査を実施。国が進めてきた医療改革が、現場にどのような歪みをもたらしているのか、そして、患者の人生の最期に、医療はどう寄り添えばいいのか、現場で始まっている「延命中止」の取り組みを通して考えていきます。

 

人生100年時代について、100歳以上の高齢者の数は現在7万人。2015年には13万人、2050年には53万人になっているという推計が出ているそうです。また国の調査として回答者の9割は延命措置を受けず、自然に任せて欲しいという結果が出ています。しかし現実には医療機関で長生きし、更に人工透析などで延命措置が行われているとのこと。

 

多くの高齢者が人工透析を受けているある病院では血圧の低下を知らせる警報があちらこちらで鳴っていました。透析困難症という症状。以前はこの治療を断念せざるを得なかったそうですが、医療技術が向上したことで、現在は衰弱が進んだ高齢者でも透析が続けられるようになったのです。80歳以上で透析を受けている患者は6万人で300倍に増えています。

 

しかし高齢化により思わぬ問題も増えていました。本人の意思が確認出来ず透析を続ける事態が広がっていたのです。取材をした女性は透析治療の間に認知症を発症。治療のことが分からず管を抜いてしまうことがあるのです。そのため家族の許可を得て拘束して治療をせざるを得ません。70人の病院患者のうち9割が認知症を発症。人工透析は1日4時間で週3回行われていました。理事長は透析のために生きている…「生かされている状況」になってしまうと語られていました。

 

救急医療の現場に100歳近くの終末期の患者が次々と運び込まれています。医師は終末期の患者だと分かっていても救命のために全力を尽くします。結果、意識が戻らず、人工呼吸器を付けて命を繋げることもあるのです。意識が戻らないから呼吸器を外せない…こうしたことに難しさが生じていたのです。

 

国は、高齢者を自宅へと移す医療制度改革を実行してきました。高齢者は在宅医など自宅で最期を迎えることを想定していましたが、結局、もしもの時に家族では命の終わりかどうかの判断がつかず、救急車を呼ぶケースが続出。一度呼吸器を付けてしまうと、そのまま判断しにくい状態となって、結果的に救命救急センターで延命医療を受けるケースが増えているというのです。

 

ある調査では85歳以上の高齢者が一度心肺停止になると、『人工呼吸器が外れ、退院できる』確率は0.5%とのこと。ある6年間入院している男性は、脳梗塞の影響で会話が殆どできませんが、毎日病院を訪れる奥様は、自らの生きる支えになっていると話しています。入院生活がいつまで続くのか先行きが見えないまま、行けるとこまで行くしかないのかなと話されていました。

 

延命医療を否定的に捉えるか肯定的に捉えるかは本人次第。透析療法によって社会生活が維持出来る場合と、認知症によって、自身の判断で維持するのは難しくなり、それが本人のための透析なのか考えなければならない時代になっているようです。NHKが全国の救急救命センターに行ったアンケートによると、終末期の高齢者が搬送されることについて問題があると答えたのは55%。おおいに問題があると答えたのは31%。家族の誰もがやりきれない気持ちになるという意見も伝えられました。

 

ここ数年に医学会や国のガイドラインは延命医療の中止に関するガイドラインを相次いで発表しているそうです。終末期の患者に対し、本人の意思を尊重、家族などとよく話し合い、医療チームでも検討され、不開始や中止が可能となっているようです。

 

そんな中、延命医療の中止という選択肢により、重い問いに直面する家族が紹介されました。救急医療の現場では、ガイドラインに沿って人工呼吸器を外す選択肢を示すところも出てきているとのこと。意識の戻る可能性が極めて低い患者の家族は、延命医療は望まない決断をしました。抜管から1時間後、患者は息を引き取ります。辛い時間が流れました。

 

救急救命センターへのアンケートによると、生命維持装置の中止という選択肢を示しているのは、117施設のうち46施設。現場の医師からは、死を人ごとだと思っている日本人が大部分で、急変時にどうしていいか分からないケースが多いという声が上がっているそうです。どのような最期を迎えたいかについて、患者のAさんは病院からの事前指示書に、重度の認知症になった場合は透析を希望しないと記しました。奥様に重い負担を掛ける前に、人生の終わり方を自分で決めたいと考えたのです。しかし、奥様は一日でも長生きして欲しいと願っています・・・。

 

最近では、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)という取り組みが始まっているそうです。ACPでは第三者が患者や家族と対話を重ね、生かすか殺すかではなくて、患者自身が最期に望む医療を共に考えていきます。番組に登場された医師は、介護スタッフらと勉強会を開き、取り組みの担い手を、医師以外にも広げようとしていました。認知症などで本人の意思を確かめられない場合、家族との過去の思い出や介護スタッフの話から、本人がどのような最期を迎えたいと考えていたか、本人の希望を探っていくのです。夫婦で考えに違いがある場合などは、溝を埋めてくれる役目の人が必要だとも話されていました。

 

1年前から夫が人工透析を受けているという夫妻は、病院からの事前指示書に初めて向き合い、人生の最期を考える中で、今を生きる大切さを感じるようになったと話されていました。

 

【人生100年時代を生きる】・・・。健康な状態で死の直前まで、自分の意志を持って生きられるのなら良いのですが、医療技術の進歩によって自分の意志が伝えられなくなっても、生かされるという現実を迎えてしまったらと思うと、様々な事を考えさせられてしまいます。自分の考えだけでなく、「こんな形で死なせたくない」という家族の思いや、「今はまだ、生きていて欲しい」そんな家族の思いまで考えていくと、個人の死であっても、家族で話し合っておくことも大切なことなのかもしれませんね。それは、結局、どう死ぬかではなくて、どう生きていくのかに繋がっていくものかもしれないことを教えられた気がします。

 

 

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